この作品って、どんな作品?

札幌市こどもの劇場やまびこ座プロデュース「OKHOTSK -終わりの楽園-」

オホーツク・メイキング秘話−音楽の部−

<オホーツク>で生演奏します、バロック・コレギウム・サッポロのふせくみこです。沢さんからは「フセクミバンドのバンマス」と呼ばれていますが、そんな呼ばれ方は人生でもちろん初めての経験です。いや、もうあんなことも、こんなことも初めてだらけの<オホーツク>です。
そして、8日間のロングラン公演なんて、コンサートではやったことも聴いたこともありません。このたびは、それが私たちの「初めて!」です。

さて、<オホーツク>にはセリフが一切ありません。全ては人形と演者そして,音楽と砂絵、スクリーンアートと照明によって物語が紡がれてゆきます。なので,観る人は自由にその会話や情景,背景に思いを馳せることができるのです。もちろんお子様でも外国の方でも楽しめます。それだけに音楽は責任重大。とてもプレッシャーも感じます。

最初にお話をいただいたとき,こんな未知の部分が多い太古の時代の物語にマッチングできる音楽なんてない…と、二つ返事できっぱりお断りしました。それに「世界の沢さん」と一緒の舞台に立つなんて無理!と尻込みしていました。思い起こせば、とってもイジイジとネガティブな私でした。
 ph 渋々お受けしたものの、台本?まだなーい。オホーツク人?知らなーい!全く手探りの状態の中で当惑しましたが,とにかく家にあるバロック以前の音楽をひたすら聴きまくって、ぴんと来たものを、たくさんのキーワードに分けたフォルダに音源を突っ込んで、沢さんに聴いてもらうという作戦にしました。これが実は…、大変ではあったけれど、とても私の勉強になったのです!宝物をたくさん見つけました。
「可愛い・郷愁」「去る・永遠〜終曲」「激しさ・炎」「決心・意志」「厳かな・厳しい」「荒い・民俗的」「寂しい・素朴」「戦い・嵐」「嘆き・涙」「短調の間奏曲」「短調の序曲」「長調の序曲」「鳥・動物」「美・落ち着き」「放浪・哀愁」「明るい・軽快」「明るい序曲」「優しい・愛」「憂い・安らぎ」、そして脚本後にセレクトした「扇」。沢さんが根気強くこれらを聴いてくれて、気に入ったもの、ちょっと違うものと、インタヴューを重ねて、だんだんに候補を絞っていきました。
 ph そして、台本の初稿が上がり、私なりのセレクトで沢さんに提案したときの忘れられない会話があります。あるシーンの音楽を聴いて、沢さんはこうおっしゃいました。「ふせくみぃ、あのさ、すっごくいいんだけど、わかりやすすぎるわ。」…。ふ、深い・・・。orz
沢さん曰く、あまりにぴったりな音楽だと、観る人の想像力を制限してしまうのだそうです。とっても印象的な、目から鱗が落ちたエピソードでした。音楽する上でも実は同様なところがあります。とても本質的なことを教えていただきました。

初演は、苦労したかいあって音楽も好評を頂きました。ですが、名手による音源もたくさん使用していたのです。私たちの技術に合わせて音楽をセレクトしてしまうと、それこそ表現に制約が掛かってしまいます。できるできないは抜きで、音楽本位で考えたかったから…というのがその理由でした。でも、音源使用には、自分自身でやっぱりどこかに引っ掛かりを感じていたのです。
 ph そして、昨年の再演、「もっと上手な人が来てくれたら、すべて生演奏でできるのにな…。」と、自分の師匠に出演を打診しましたが、スケジュールが合わずに断られてしまいました。さて、どうする!?……覚悟を決めて、みんなで力を合わせて実演を倍増しました。大増量ですよ!仕掛けとして音楽がかぶっていくところ以外は、すべて演奏しました。
さて今年。演出の変更によって、残った1曲もナマにしなくちゃいけないな…と思っています。前後の曲との調性があまりにも合わないので、邪道ですが移調して指やアーティキュレーションも変えました。また私の「初めて」です。うまくいくでしょうか。今からドキドキします…。
 ph というわけで、<オホーツク>全編にわたって、古いヨーロッパの音楽を中心に,古楽器と呼ばれている当時のスタイルの楽器で,笛,ヴァイオリン,ヴィオラ・ダ・ガンバ,チェンバロ,太鼓の5名が演奏を務めます。

オホーツク人の姫長と朝廷の命を受けた武将の2人を軸に,古いもの×新しいもの,東洋×西洋,静×動,北×南、型×自由,実在×幻影,男×女,そして,生×死,愛×忠義,対照的ないろいろがミックスして,観たことも聴いたこともないオモシロイ芝居が出来上がりました。
わかりやすく説明すると、また沢さんに怒られるので、この辺にしておきます!ぜひ五感全開でいらしてください!やまびこ座でお会いしましょう!(^-^)
 ph ※写真は前回公演のときの稽古の様子です。

ふせくみこ

バロック・コレギウム・サッポロ ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者
ヴィオラ・ダ・ガンバを福沢宏氏に師事。札幌・長野・都留におけるセミナーにて、平尾雅子、上村かおり、デイヴィッド・ハッチャー各氏のレッスンを受講。バロック・コレギウム・サッポロ事務長。日本ヴィオラ・ダ・ガンバ協会会員。

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