「ライブアートツアーin栗山THE MOVIE」栗山町先行上映会 講評
秋山孝二(公益財団法人北海道演劇財団副理事長)
今回の『ライブアートツアーin栗山THE MOVIE』、一般公開に先立って企画された地元栗山町での上映会は大変盛り上がり、また今後につながる多くのご意見も提起されて収穫が多かったと思います。
やってお仕舞ではなく、演劇の創り手と町民が一堂に会し、実施したツアーを映像で振り返りながら、「これからの北海道の文化芸術のあり方を考える」こと、地域の中での文化芸術の可能性や、札幌と地域が文化芸術を媒介として連携することによって生まれる可能性など、一緒に考えたいとの目的は間違いなく達成されました。
私はこれまで栗山町とは自身の幾つかの活動から、サラサラレッドの岡本大作社長、ミニトマトの金丸農園、吉田農場、「ファーブルの森(現オオムラサキ館)」、小林酒造の小林精志専務取締役、栗山町議会改革等で訪問したりお話を聞いたりしていました。今回あらためて、そもそもの町の生い立ち・開拓の歴史を知り、ここで暮らしてきた方たちへの更なる敬意を表したい気持です。
この企画、今振り返ってみると、一番最初は演劇を通しての私の友人・遠藤大輔くん(現在、愛知県に居住)が栗山に移住して、町役場地域おこし協力隊の長広大さんとご一緒に札幌の私の所に提案書を携えて相談に来たことから始まりました。お二人とその後数回お会いして幾つかのプランにブラッシュアップし、私も関係している(公財)北海道演劇財団の斎藤歩理事長を紹介して、まちづくりと演劇が繋がりました。
私は以前から、地域の固有の歴史をそれぞれのスポットでの小演劇で繋げて作品にする『歴史ツーリズム』のプログラムを提案していて、それには取材に基づくプロの脚本・演出・俳優が必須で、財団の新たな事業展開としても大変期待できると思っていました。この案件はしばらくそこで小休止していた、或いは熟成していたと言った方が適切かもしれません。その後、斎藤歩理事長が注目度を上げてくれて数回の深い現地取材、栗山町の長広大さん、ブランド推進課の三木貴光さんはじめ地元の方々の溢れる情熱の甲斐あって、今回のツアープログラムに辿り着き、更には映像作品として(株)トップシーン札幌の林亮一プロデューサーのご尽力でアーカイブ化に発展しました、地道な企画の練り直しとまさに人を得た感じの展開で大プレイクでしたね。
度重なる取材に裏付けられ深堀りされた歴史スポット紹介、更にスポットを繋げる脚本、初めて夕張川を渡ってこの地に踏み入れた女性による栗山町の始まりの第一歩から、「幸せの黄色いハンカチ」の桃井かおり、小林酒造を支えてきた女性のエンディング、こんな「栗山町を陰で支え続けてきた女性たち」としての『栗山町物語』にツアープログラム・動画を仕上げた斎藤歩理事長の構想力に脱帽です。そして、ベテラン俳優の山野久治(風の色)、納谷真大(イレブンナイン)、小島達子(イレブンナイン)、磯貝圭子(札幌座)、泉陽二(札幌座)、音楽のMAREWREWの皆さんのプロフェッショナルなパフォーマンスにも感動しました。終盤の(株)小林家の小林千栄子社長の語りとチノおばあちゃんとの場面では、私も客席の周りの方々も涙していました。
上映後の質疑応答でご意見がありました、「今回をスタートとして芸術文化とまちの魅力を再発見していく活動に繋げたい」、まさに地元の皆さんは大きな手ごたえをつかみ取った一連の取り組みだったのでしょうね、これからの栗山町に注目、目が離せませんね。関係者全ての皆さんに感謝です、ありがとうございました。