この作品って、どんな作品?

劇団アトリエ「学生ダイアリー」

どいつもこいつも、大学生ったらばもう!

私が「学生ダイアリー」をちょうどよく学生のうちに見た人間のひとりです。
脚本・演出の小佐部さんと同い年なんで、大学4年生の5月末に見てた。わりと大学生味わい尽くして、これから就職きめなきゃねって時でした。
ものすごく面白くて、やられたーッとおもったのは、はっきりと覚えてるんですけど。
うわーって、ちょっと小佐部さん嫌な奴って思ったりして。ズンとくる気分とか、ニヤニヤしちゃう気分とか、いろんな心持ちは覚えてるんですけど。

今回、こういった紹介文を書かせていただくことになって、ストーリー的な内容を思いだそうとしたんですけど、まー思いだせないんですよね。
シーンだけが思いだされて、全体的なストーリーはてんで思いだせないんですよ。
 ph でもそれが正解なのかもしれなくって、この作品にはこれといったストーリーの波がないんです。
当時劇団アトリエは、公演のジャンル分けをしていて、「フィクション作品」「プロブレム作品」「名作劇場」っていうふうに。
そのうち「デイリー作品」っていうジャンルに分類されるんです、この「学生ダイアリー」は。
「デイリー作品」は「人々の日々の営みを描写する作品」ってことになってました。一番地味なジャンルですね。
 ph ただただ日常のシーンが並べられているという演劇なんですけど、そのシーンの並べ方がコントラストあってイイんですよね。
実際、日常に起きていることをじーっと見るのって面白いと思いません? 電車の中での高校生の会話とか。ファミレスで隣に座った男女の会話とか。聞き耳立てちゃうじゃないですか?
立てちゃう派のみなさんはきっとかなり面白がれると思います、かなりいいのが覗き見れるんで。
そういうの普段しない人は、こういうことの面白さを知るために「学生ダイアリー」見たらいいです。

あ、後から知ったんですけど、そういう演劇を「現代口語演劇」と呼ぶらしいです、専門用語(?)で。
人が普通にしゃべってるだけの演劇。90年代に流行ってたらしいんですけど、私その時代の後に演劇を始めたわけで、そういった意味でも新鮮で、わーっ、面白いーって、思ったんですよ、大学生の私は。
だってなんか、舞台上で会話してるのに、同じ部屋で別の人達の会話も始まっちゃうんですよ。いやいや、どっち聞けばいいんだよっていう。
 ph まぁその、シーンを並べられてる、大学生がふつうーにしゃべってるシーンが並べられてるだけなんで、観てる側としては、自分なりになんか面白いとこを見つけにいかなきゃいけないわけなんですね。
ミュージカルだとかであれば「ここが見どころ!」「さあここで盛り上がって!」ってのがわかりやすく見せつけられるんですけど、そういうことしないので。
能動性、大事。

オススメの見方は、出てくる人たちの隠し事をさがす、っていう見方です。
明らかにウソついている奴とか、明らかになんか誤魔化してる奴とか、を、まず注目して見てください。
で、そうするとだんだん、舞台に出ている奴ら全員が、隠し事しているように見えてくるんですよ。
客席の私たちはその隠し事に気づけるんですけど、舞台上にいる人たち、あんまり気づかなかったりするんで、その優越感でニヤニヤしてください。
すっごい大きな隠し事から、小さい隠し事まで、いっぱいある。
(ある、と言ったけど、ほんとに隠し事しているかどうかは確認してないです、私の思い込みや憶測で、隠し事認定してるだけ)
 ph そういう見方していると、細かいところがどんどん気になっていくんですね。
当時の観劇後のメモには、こういうのが残ってます。
“山川出版の日本史、小さいダルマ、スカイツリー、かわいい犬、でかい眼鏡、イヤホン、黒い漫画、横書きの本、3万のネックレス、財布、たばこ、青いPSP、携帯電話、パン”
初演のときに出てきた小道具です。
個人的には、こんな細かいところが印象に残る演劇ってあんまりないですね。  ph

加納絵里香

北海道教育大学札幌校の演劇サークル・演劇集団 空の魚を卒業して3年ちょっと経つ。
社会人になってからは、いろんな劇団でちょこまかとお手伝いをしてきた。
札幌学生対校演劇祭、遊戯祭の実行委員などもやっている。
好きな食べ物はイカゴロのルイベ。

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