初演がもう4年前ですか。僕が東京で活動する前の札幌での最後の公演だったので思い入れのある作品です。
introと言えば女性キャストが多い作品が定番で、その中で『蒸発』は男性キャストの方が多いので珍しいですね。
イトウワカナさんと言えば、僕は女の一生を題材に家庭の話を書いた『真人間生活』が好きで、実家の母を思い出して終演後は母に電話してました、その後も親孝行しなきゃと考えちゃいました。
その時にワカナさんは温かい家族の話が上手い方だなと感じていました。
ですが今回の『蒸発』は家族の話でありながら全く別、ミステリアスで冷たくて気持ち悪い。
役が持っている深層部分での嫌な所に踏み入れた時の、言葉のやりとりの気持ち悪さと動きの気持ち悪さが相まって倍増して感じる。
そして、その役の持っている嫌な所はみんなが少なからず共感してしまう。
あっそういう人居るよなって思える、そんな人物造形がまたこの作品の魅力でしょう。
また身体表現が素晴らしい!今回は振り付けの方も居るようで、稽古を見学した時にはキャスト全員汗だくでした(笑)初演の時もウォーミングアップは入念にしてましたが、今回はその倍は入念にしなければいけないほどに激しい!これも見所。
そして舞台を十二分に良く魅せてくれる美術と装置!僕のお気に入りです。
劇場入りして雨漏りの音がするのですが、SEかなと思わせといて本当に舞台上は雨漏りしてるんですから(笑)
そこに音響、照明、初演にはなかった映像も!加わって楽しみ度が半端ないです。
さて初演では僕は[いとこのあっちゃん]役でした。当時はイナダ組の先輩の高田豊さんと共に試行錯誤で『蒸発』に挑んでいたなぁと、豊さんの役[りょうちゃん]の終盤での気持ち悪さは凄すぎた(笑)似合ってた。
他にも毎回出演者で分担してケーキ作りしてたとか色々思い出します。
『蒸発』ベタではなく難解でもなく程よい。イトウワカナさんの世界。
普段あまり文章を書いておらず拙いですが、目を通していただきありがとうございます。
少しでも『蒸発』を観てみようと思ってもらえたら幸いです。
『蒸発』の言葉で僕の好きなものを
【この家の湿気がたまらないのです】
菊地 英登
虻田郡洞爺湖町出身
現在は東京で演劇活動中。
東京では【DOG'S】【ママ僕】【極上文學】【ナイスコンプレックス】
札幌では【イナダ組】【イレブンナイン】【弦巻楽団】【intro】【ハムプロジェクト】等々出演。
札幌演劇シーズン2015-夏では、札幌座「ブレーメンの自由」にて3年ぶりに札幌での公演に出演する。