アイヌ影絵「NOCIWCIP~ほしふね」レポート③
fromアルテピアッツァ美唄

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道内5か会場を巡るアイヌ影絵「NOCIWCIP~ほしふね」。会場ごとに違う顔を見せてくれる本作の魅力を、今回は「安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄」の加藤知美さんがレポートしてくれました。
アルテピアッツァ美唄は、札幌から北東へおよそ60キロ、かつて炭鉱で栄えた美唄市にある野外彫刻公園で、美唄出身の世界的彫刻家・安田侃の彫刻作品を敷地や廃校舎を活用した建物内に展示している人気のスポットです。今回は旧体育館での公演。体育館内に展示されている安田侃の彫刻作品と本作がどんな化学反応を見せるのか、注目のLIVEです。
「安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄」の加藤知美さんのレポートは以下のとおりです。

「Key of Dream」

「安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄」加藤知美

 美唄のかつて黒いダイヤ=石炭で栄え活気にあふれた炭山(やま)は、時を経てその多くが森に還りました。そうした土地の小学校跡を再生し1992年にオープンしたアルテピアッツァ美唄は、過去を記憶にとどめ未来につなぐ彫刻美術館。少しずつの積み重ねも今年で30年ですが、丸屋根の体育館は安田侃の彫刻が置かれることで、人々が立ち寄り集うあたたかい空間になりました。ここでは、ステージも幕もありませんが、素晴らしい音の響きに惹かれアーティストのコンサートが催されます。その場所にアイヌの物語が唄と影絵で繰り広げられる夢のような時間がまもなくやってきます。
 この空間にアペトゥンペさんの唄声はどう響くのでしょうか。ほしふねさんの影絵は夕暮れ時の木造体育館にどう映えるのでしょうか。構成をてがけるマユンキキさんは、安田侃彫刻のつるっとした生々しさも併せ持つ「なめらかさ」に着目し、彫刻に影響を受けつつ変化していく構想を語ってくれました。また、7月の暑い日に下見に来られたほしふねさんは、彫刻と人々の関わりに興味津々で、ガラス窓を隔てた背後の森にも何かを感じていたようでした。生活の中に身近にある安田侃彫刻、そして今なお創り続けられているアルテピアッツァ(イタリア語で芸術広場)に触発されての作品に期待がふくらみます。この作品は場の空気に呼応して創られると聞き、空間や彫刻、窓の外の景色から演者が何を感じ表現するのか楽しみでなりません。想像を超える夢の世界が見られることでしょう。

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 会場のアートスペース(旧体育館)の窓の外には「妙夢」という彫刻があります。JR札幌駅にある白大理石の「妙夢」は北海道民にとって親しみ深い形です。「妙夢」は英名でKey of Dream。あの穴の向こうに夢があるのか、はたまた手前が夢なのか。子どもたちは無邪気に「妙夢」の穴をくぐって行ったり来たりして遊びます。かつて子どもたちが走り回った体育館でアイヌの子守唄に導かれて繰り広げられる夢幻に心は躍ります。
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アイヌ影絵「NOCIW CIP~ほしふね」の公演情報はこちら
※チケットはお電話で予約できます(北海道演劇財団 TEL.011-520-0710まで)
「安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄」公式サイトはこちら