中村公美(北海道新聞文化部 編集委員)
1月5日(木)に札幌コンサートホールKitara小ホールで行われた音楽劇「動物たちの夜曲(セレナーデ)」。昨年、TEAM NACSのリーダー森崎博之と札幌交響楽団のコラボ企画として実施し大好評だった音楽劇「ピーターと狼」に続くシリーズ第2弾として、今回は企画の段階から円山動物園も加わり、サン=サーンスの「動物の謝肉祭」をべ-スとした、オリジナルステージに挑みました。
また、舞台美術は前回に引き続きアートで障害のある子どもの療育をサポートするペングアートが担当。
コロナ禍にあってもライブのステージにこだわり続ける北海道のアーティストたちがタッグを組み、ジャンルを越えて音楽の力と、ライブの魅力を発信した前回の公演から1年。今回のステージについて北海道新聞編集員の中村公美さんに講評をいただきました。以下、原稿です。
二人が演じた主役の女の子と男の子が観客を夜の円山動物園に誘いました。
本公演は、2021年10月、人気演劇ユニット「TEAM NACS」のリーダー森崎博之と札幌交響楽団(札響)のコラボ企画として札幌市内で開催された音楽劇「ピーターと狼」(プロコフィエフ作曲)に続く第2弾。同企画は子供たちの好奇心を刺激し、クラシック音楽に関心を持ってもらうことをねらいにしたファミリーコンサートだ。第1弾の「ピーターと狼」は札響の演奏に乗せて、森崎らが朗読。想像力を喚起する内容は多くの観客の感動を呼び、主催の札幌演劇シーズン実行委などには「ぜひ、こうした企画を続けてほしい」との要望が寄せられていた。
第2弾の「動物たちの夜曲」はフランスの作曲家サン・サーンスの組曲「動物の謝肉祭」をベースに構成。第1弾と同じく札幌座の斎藤歩が演出、森崎博之が朗読、札響が演奏を担当。さらに夜の動物園が舞台になるとあって、企画段階から円山動物園も加わり作品づくりに協力したほか、当日は飼育係を務める職員も出演。作品の世界をより親しみやすいものにした。
さらに舞台美術にはアートで障害のある子どもの療育をサポートする札幌市豊平区と清田区の放課後等デイサービス「ペングアート」も参加。夜の円山動物園を見学してイメージを膨らませた動物たちの絵24枚が舞台を飾った。鮮やかな色彩、大胆なタッチのこの絵画が、クラシックコンサート向けの舞台を「夜の動物園」と想起させるのに非常に効果的だったと思う。
本作は1日限りの2公演で、家族連れらでほぼ満席に。子供だけでなく、大人も楽しめる内容は、多彩な分野の芸術家が活躍する札幌ならではの新しい舞台作品だと感じた。構えずに音楽に身をゆだねるこの経験は貴重。本作を含め第1弾も「教育」という側面が強いと思うのだが、エンターテイメントとしても楽しめる要素が多い取り組みだと感じた。子供だけでなく、クラシックは苦手と思っている幅広い年齢層を対象に広げ、札幌発の各分野が融合した舞台芸術として継続し、ライブの新たな楽しみ方を広げることを期待したい。
札幌交響楽団の演奏とペングアートの子どもたちの絵がステージを夜の円山動物園に!