さっぽろパペットシアター「北のおばけ箱2」レポート
舞台手話通訳の成果と課題

渡部 三枝子(舞夢サポーターズ事務局長)

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手話通訳と言えば、通訳者が動かずに決められた場所に立ち通訳をする。そんなイメージがありますが、舞台手話通訳では、通訳者が演者と一緒に舞台に立ち、演者のそばで演者の動きに合わせて通訳をする「ムーブアラウンド型」に注目が集まっています。
12月に行った「北のおばけ箱2」では、舞台手話通訳に実績のある舞夢サポーターズが、この「ムーブアラウンド型」の手話通訳に北海道で初めてチャレンジしました。
このほかにも「北のおばけ箱2」では、通訳者が作品のイメージにあった衣装を着け舞台上での違和感を払拭したほか、全員で踊るダンスの振り付けの一部を手話にするなど、聞こえの不自由な方も楽しめるよう演出家と手話通訳者が連携し様々な工夫がなされました。
ユニバーサルな舞台を目指し、新しい挑戦を試みた「北のおばけ箱2」。今回、実際に舞台に立ち手話通訳を行った舞夢サポーターズ事務局長の渡部三枝子さんに手話通訳者から見た成果と課題をまとめていただきました。以下、原稿。


人形劇「北のおばけ箱2」舞台手話通訳の『成果と課題』
渡部 三枝子(舞夢サポーターズ事務局長)

この度の「北のおばけ箱2」では「固定型手話通訳」と一部「ムーブアラウンド型」(演者の動きに合わせて側で通訳をする)を取入れた台本をいただきました。
私たちは今まで「固定型手話通訳」で舞台手話通訳を受託していましたので今回の依頼には正直、不安がありました。時代の流れで最近は「ムーブアラウンド型」での舞台も増えています。北海道で初めて挑むことに会員も同意し本番へ向けての準備が始まりました。

12月13日から稽古見学へ通い始めましたが、演出家からその日に「手話通訳の方、人形と一緒にお願いします」との指示、台詞を手話に翻訳は概ね出来ていましたが、緊張しながらの稽古になりました その後の稽古で少しずつ自信も付き本番に挑むことが出来ました 通し稽古にゲネプロでは「手話監修」のろうあ者から表情や動き、手話表出について細かな指示があり通訳者は必死で修正を続けました。

本番当日、4名の通訳者は「必ず出来るオォー」のかけ声で舞台に立ちました。
結果、ろうあ者の観客からは「とても楽しく良かった」と評価をいただき「ムーブアラウンド型」の通訳方法を取入れて本当に良かったです

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評価を分析してみると成果として
*人形の側で通訳すると、内容がよく分る
*動きや表情があることで楽しさが伝わる
*通訳者の衣装も違和感がなく一体感が感じられる
*一部の字幕があったことで「アイヌ語」も分かり良い勉強になった(ろうあ者の感想)

課題としては
*多数の人形が舞台上にいるときは、誰が話しているのか混乱するので、どのような通訳方法で明確化させるか
*今回は大勢の鬼が賭博をする場面に2名の通訳者が入りましたが、照明の関係で観客からは見づらかった面がありました 立ち位置を工夫する必要があると思います
*課題ではないかもしれませんが、通しの稽古時間がもう少し欲しかったです