11月に行った「ジャズ・シティ札幌の底力Ⅲ『北と南』」」。その魅力を、北海道と九州のミュージシャンや公演を企画したスタッフに取材をして事前にレポートしてくれた「地域と舞台をつなぐクリエイティブ講座」受講生の泉陽二さん(札幌座・俳優)に、鑑賞後のレポートもまとめていただきました。九州と北海道のJAZZシーンは、果たしてどんな化学反応を見せてくれたのでしょう。
以下、レポートです。
泉 陽二(札幌座・俳優)
さて、いよいよその夜がやってきた。
北海道を活動拠点とする6人のミュージシャンと、九州から迎えた5人のミュージシャンとの、一夜限りのライブセッション。
時間になって、ステージに丹羽肇さん率いる九州チームが現れ、上村計一郎さんのドラムスティックの合図で演奏が始まる。ふわっと浮かび上がるような感覚。会場が呼吸を始めたようだった。
ライブだ。
2曲目が終わり、丹羽さんが九州のイントネーションでメンバーの交代を告げる。北海道チームのメンバーが混ざっていく。音楽にも、ジャズにも、九州訛りというものはあるのだろうかと、ふと思う。ジャズってなんだろう。
休憩を挟み、第二部は、山下ヤスシさん率いる北海道チームの演奏で始まった。驚くほど空気が変わる。雪の舞う、しんとした夜の札幌。まさに演出のなせる業。
そしてメンバーはまたまた混ぜこぜに出たり入ったり。
九州と北海道のミュージシャンが出会うことでどんな化学反応が起こるのかという興味は、白状してしまうと、もし何かが起きたとして、自分にはそれは分からないだろうなと思っていた。即興とか、ジャズとか、専門的なことは分からないけど自分なりに楽しめればそれでいいと思っていた。
人間てすごいな、人間て面白いな。
そこに居合わせられたことをよろこんだ。
今回に限った印象では、九州のミュージシャンの演奏は野性味があり迫ってくるようで、攻撃的でさえあった。一方、北海道のミュージシャンの演奏は、繊細でやわらかく、融和的であった。
南と北の11人、それぞれに魅力的。みな奔放でありながら、それでいてお互いを尊重している。
いくつかの約束事があるだけで、演奏者ですら次に何が起こるのか予測がつかないのだろう。
その瞬間瞬間に音楽は生まれていた。
ミュージシャンたちはみな楽しんでいた。出会いに。知己との再会に。ともに演奏できることを。
お客さんを前にして演奏できることを。
札幌で演奏できることを。
そして自分たちの出す音にものすごく集中していた。
「勘所」とでも言うのだろうか、その時が来ると一瞬にして空間が締まるのがわかる。
ミュージシャンの表情、息遣いに観客もまた同期していく。心地のいい緊張感。
南と北、中心から遠く離れている両者が交わるからこそ、のびやかで、冒険心に満ちた、ここにしかない、大胆なライブセッションが実現しえたのではないだろうか。