さっぽろパペットシアター「北のおばけ箱2」 講評
手塚 清貴(北海道立札幌聾学校 教諭)
12月24日(土)・25日(日)に行われた「北のおばけ箱2」。
「北のおばけ箱」は、北海道のおもしろおばけたちがたくさん登場する「アイヌ民譚集-えぞおばけ列伝(知里真志保編訳)」を題材にした舞台で、シリーズ第2弾となる今回も、ステージでは小学生から大学生までが大活躍!ボーダレスアートサポート北海道(BASH)の子どもたちが担当した舞台美術や人形も華やかに舞台を彩りました。
今回はさらに札幌ろうあ劇団「舞夢」と舞夢サポーターズの協力を得て手話通訳にも挑戦。聞こえの不自由な人にも生の舞台を楽しんでもらえるよう、手話と字幕をシーンに合わせて組み合わせて使用したほか、手話通訳者も出演者と同じように作品に合わせた衣装を着用。また、全員で踊るダンスの振り付けの一部を手話にするなど、作品の中に違和感なく手話を取り入れるさまざまな新しい演出が随所に見られました。このほかにも、手話通訳者が役者として舞台に立ちながら手話通訳を行う「ムーブアラウンド」にもチャレンジ。この手法は舞台手話通訳の新しい手法として注目を集めているもので、北海道では今回初めて取り入れられました。
演出の矢吹英孝さんは「今回は手話通訳という新たな試みで、表現の幅が広がった」と語っています。
一方で舞台をご覧になった方の感想も気になるところです。特に聞こえが不自由な方に今回の舞台はどう映ったのか。北道立札幌聾学校教諭の手塚清貴さんにご講評いただきました。合わせて聞こえが不自由な方からいただいた感想も紹介させていただきます。以下、原稿です。
手塚 清貴(北海道立札幌聾学校 教諭)
今日の人形劇は、アイヌの衣装を着た手話通訳者が人形の側で通訳するというのに引き付けられました。人形と手話通訳者が並んでいると見やすいです。
私が見て来たプロの演劇は手話通訳者がついても、今回のような動きや表情は無く淡々と通訳をしていました。今回のように、人形と表情や動きのある手話通訳者を一緒に観ることが出来る演劇が増えて欲しいです。
演劇開始から15分位は、多数の人形が出てきて誰が話しているのか分からない状況でした。聞こえる人のペースとなっていたと思います。それは、やむを得ない面もあるかもしれません。その後、30分位からは、二人の会話(パナンぺとぺナンペ、夫婦)になり、通訳者が身体や顔の方向を変える方法、専門的にはロールシフトというのですが、それを取入れていたのでわかりやすかったです。
話し手の人数が増えてくると工夫が必要になります。私もその点の工夫を思案中です。
私は、大人になってからは予想して観ることが出来るようになりました。
聾児はまだ手話通訳者を見慣れていないので、多数の人の会話には混乱してしまうと思います。是非、今度は聾児たちにも観て欲しいので、聾学校に来て欲しいです。
今日は、聴こえる娘(聞こえない夫婦の子供で聞こえる子のことをコーダという)と一緒に観て楽しむことが出来ました。これからも、話し手の側に手話通訳者がいる演劇を取り入れることをお願いしたいと思います。
手話通訳者は役者として舞台に立ちながら手話通訳を行う「ムーブアラウンド」に挑戦(写真右)
手話通訳者は作品に合わせた衣装を着け(写真右2名)、手話と字幕をシーンに合わせて使用
=聞こえが不自由な方からの感想=
☆今日の演劇は色彩がハイカラで人形のキャラクターが可愛く、登場人物と手話通訳者も一心同体の動きに感激しました。内容も子どもから高齢者まで分かりやすい内容でした。
字幕もアイヌ語が表示されて勉強になりました。手話通訳者の衣装も演劇に合わせていて良かったです。舞台でみんなが手話を使うのを初めて見ました。
今後もたくさん手話通訳者に立ってほしいと思います。照明も良かったです。クリスマスにやまびこ座
に来て素敵なプレゼントをもらいました。ありがとうございました。
☆久しぶりのやまびこ座でした。内容も理解できて楽しかったです。誘ってもらいありがとうございました。