映画「アートなんかいらない!」レポート
「北海道シアターカウンシルプロジェクト」の一環として10月22日(土)・23日(日)の2日間、札幌市生涯学習センター ちえりあ 講堂で行った映画「アートなんかいらない!」の上映会。
当日、ご来場いただいた「指輪ホテル」の羊屋白玉さんに本作の感想を寄稿していただきました。
映画同様、「アートとは何か?」を考える一助に。ぜひ。
映画「アートなんかいらない!」を体験して
羊屋白玉(「指輪ホテル」樹立者。演出家、劇作家、俳優、ソーシャルワーカー)
たくさんの人のインタビュー、たくさんの声が撚られ生態系のように感じました。
印象深かったのは「ラスコーの壁画」でした。インタビューはなく、人類の先輩たちが関わったものだということは想像できますが、その現象だけがありました。
スペインとフランスの境目のラスコーという土地で、子供たちの冒険の途中に発見されたという洞窟壁画を、ジョルジュ・バタイユは、最古の芸術だと述べてます。翻訳された頃には、「アート」いう言葉は一人歩きしてなかったので、「芸術」と記されてます。
バタイユの著書「ラスコーの壁画(二見書房)出口裕弘訳」を引用しますと、23ページに、《芸術作品(利害にではなく、心情に関わるものとしての芸術作品)》とあります。
ああ、近代、現在「アート」と呼ばれているものは、今や、他の産業や職業と同じように、利害に関わっているものになっているな~と、思いました。これには、わたしも含め、誰も言い訳はできないのではないかとおもいます。さらに、COVID19の世界的な感染拡大を同時代に体験したものとして、この「利害」があらわになったいろんなニュースが思い出されます。
同23ページ、《人間の手に成る各種の作品の美しさは、外見はどうであれ、友情に対して訴えるもの、友情の持つ優しさに対して訴えかけるものだ。美とはつまり、私たちが愛するところのもの自体ではないのか。友情とは激情ではないのか。美をもってただ一つの答えとなすような、つねに繰り返される問いかけではないのか。》
この文章は、昨今、アートが作り出される環境においてたびたび持ち出される、アーティストにとってとても大事なテーマ「その場所は安全なのか。安心できる場なのか。」という問いの答えのように思えます。
いつか、山岡信貴監督と、「ラスコーの壁画」の読書会をしたいです。