「ライブアートツアーin栗山」レポート②

ライブアートツアーのその先へ

ライブアートツアーin栗山 @2022.9.29

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 2022年9月29日に開催された「ライブアートツアーin栗山」。歴史や文化にまつわる野外劇を楽しみながら、栗山町内をめぐるツアーには、道外からの参加者も含む12名が参加。好評のうちに幕を閉じることができました。
 語り部となってくれた地元の方々をはじめ、多くの町民の皆さんとともにつくり上げることができたライブツアーですが、改めて考えてみたいのは、この事業の可能性です。ライブアートツアーの先に見える演劇とまちの連携が生み出す可能性について、関係者にお話しを伺ってみました。

 ツアー当日。朝焼けに包まれた早朝の栗山駅に集合した参加者たちが、バス乗車時に朝食として手渡しされたのが栗山産のお米でつくった「おにぎり」です。参加者から大好評だったこのおにぎりですが、実は本ツアーのために企画されたオリジナル。栗山町内の野菜直売所「値ごろ市」で買える地元の食材を利用して、栗山在住の若者たちが中心となっておにぎりの具を考案しました。

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 「ツアーをきっかけに発案したおにぎりをはじめ、ライブアートツアーは開催して終わりではなく、ツアーで行ったことや得たものを今後の活動にも積極的に生かしていきたいんです」と話すのは、地域おこし協力隊の長広大さん。現在、近隣にある江別市の大学生とともに、学生の農業体験や商品開発のプロジェクトに関わっている長さんは、ライブアートツアーを町内の歴史を掘り下げるきっかけや、学生たちの学びの機会にしていきたいと語ります。「このライブアートツアーで巡った場所を、学生たちに改めて取材してもらい、学生たちの手で新たにツアーを企画してもらうのも面白いかもしれないと思っているんです」。

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 栗山町ブランド推進課の三木貴光さんも「このツアーは町民自身が、自分の町への愛着を深める作用があると思うんです」と語ります。「このツアーは外部からの誘客にも効果はあるでしょうが、同時に町そのもののモチベーションを上げる効果もあるのではないでしょうか。シビックプライドという観点からも私は非常に可能性を感じています」。
 栗山町内で丁寧に取材を重ねてつくり上げられた斎藤歩さんの脚本を手にして、三木さんが思った次なる一手は「町の子どもたちもつくり手側で体験してみてはどうだろうか」ということでした。「子どもたちが見聞きしたものを自らストリー化して発表会で披露するなど、町民が自ら動いて、自分の町の魅力や知られざる物語に出会うことができれば改めてまちを見直し、栗山のことを考えるきっかけにもなると思うんです。斎藤歩さんという北海道の演劇界を代表する人物が、この栗山町という町に目を向けてくださり、そして素晴らしい脚本を書いてくれたということは、私自身も改めてまちについて考える非常に良い刺激になりました。町民を鼓舞する機会にもなり得るのではないかと思っています」と三木さんは語ります。

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 「自分がどこかへ旅行へ行った時のことを考えると、観光客向けのお土産を買うより、地元の人が使っている市場で買い物をした方がずっと楽しいじゃないですか。それは物語も同じで、観光客向けに書かれたパンフレットよりも、町の人から直接見聞きした物語の方がずっと面白いんです」と語るのは、今回、構成・脚本・演出を手掛けた斎藤歩さん。その言葉通り、早朝から始まったツアーは、観光パンフレットではたった1行で完結されてしまったり、漏れてしまうような物語にも丁寧に光を当てた内容となっていました。参加者はその内容に知らず知らずのうちに引き込まれ、笑ったり、驚いたり、感動したり。物語の力、演劇の力が存分に発揮された内容となっていました。

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 この物語の力、演劇の力によって引き出された、栗山町というまちのポテンシャルは、このあとまちの中でどんな化学反応を起こしていくのか。札幌の演劇人と栗山町のまちおこしに関わるメンバーが、ライブアートツアーという共通の創造体験を通して生み出したものは、そのきっかけとなる、たくさんの可能性の原石であり、“まちづくりの素”といえるものなのかもしれません。