「ライブアートツアーin栗山」レポート①
9月3日まで参加者募集中、「ライブアートツアーin栗山」
9月29日に開催予定の「ライブアートツアーin栗山」。過去に札幌、増毛を舞台に行われたこのツアーは、その地に秘められた歴史遺産などにまつわるオリジナルのミニ野外劇を楽しみながら、まちを巡るツアーです。
構成・脚本・演出は札幌座の斎藤歩さん。ミニ野外劇には、イレブンナインの納谷真大さん、小島達子さん、札幌座の磯貝圭子さんが出演します。
今回は栗山ライブアートツアー直前スペシャルとして、本イベントの仕掛け人たちにツアーの魅力について話を伺いました。
地域×演劇のマッチング
「ライブアートツアーin栗山」開催のきっかけは今から1年ほど前。栗山町の地域おこし協力隊の長広大さんが、演劇とのマッチングを目指した企画を検討したことから始まります。
「町内の演劇に詳しい方と、寅さんに扮した俳優さんが野菜や特産物を叩き売りするマルシェの開催など、演劇と地域を絡めたイベントができないかという話になって。僕自身は演劇に疎かったのですが、非常に面白い取り組みだと感じ、かなり漠然とした状態ではあったものの、斎藤さんに相談に伺ったんです」と長さん。この時のつながりが縁となり、1年の時を経て長さんが描いた地域と演劇とのマッチングは、札幌、増毛に続く、「ライブアートツアーin栗山」として進んでいきました。
「実は最初に話を聞いた時、正直よくわからなかったんです」と話すのは、栗山町ブランド推進課の三木貴光さん。ライブアートツアーの企画に対して、役所の反応は当初、戸惑いが多かったと言います。しかし斎藤さんと会話を重ねていく中で、「ライブアートツアーのように地域とつながりたいと考える人たちと、地域に興味関心を持つ人が参加する場を作ろうとする活動」の存在を認識。「観光に力を注ぐことも大切ですが、私はもともと『関係人口』を地域内外に増やしていくことが重要と考えていました。演劇というアプローチは、これまで届かなかったニッチ層にも響くのではないかと思ったのです」と期待を膨らませていきました。果たしてこの栗山町をどんな切り口で物語にしていくのか。斎藤さんと長さんは物語の種を見つける取材行脚を始めました。
演劇の目線で紐解く栗山町物語
長さんが地域おこし協力隊として栗山町で暮らす中で実感したのが「駅前の花壇づくりや、里山活動など、関わる人々も面白く、町民全体が活発なんです」ということ。「栗山町に生きる人々の日々の営みにつながるような話にしたい」と斎藤さんに伝え、様々な人に話を聞きに行きました。
栗山町の歴史は、開拓を指導した泉麟太郎から始まります。「肝が据わっていて、行動力もあり、その魅力は既存の言葉では当てはまらないですね」と泉麟太郎を評しながらも、最も斎藤さんを惹きつけたのが「栗山町に最初に足を踏み入れたのが、実は女性だった」という事実でした。「雪解け水で勢いを増した夕張川を渡るのは非常に危険。男たちは開拓時の働き手になるから流されてはいけないと、最初に小船に乗ることになったのが、泉麟太郎一行の中にいた女性だったんです」と斎藤さん。栗山町の歴史を語るのに欠かせない夕張川の初越えに女性の存在があったという気づきから始まり、町を歩き、施設を訪ね、人々の話に耳を傾けるうちに「栗山町を陰で支え続けてきた女性たち」という、今に続く物語の軸が見えてきました。
「開拓期から現在まで、一つの物語として繋げていったのではなく、“繋がっていた”という感覚です。札幌だけではなく、栗山町の人にもぜひツアーに参加してほしいですね」と斎藤さん。「地方には面白い人と歴史がたくさんあることも認識できる機会になると思います」と長さんも胸を張ります。
ちなみに、高倉健主演の「幸福の黄色いハンカチ」の重要なシーンは栗山町のとある場所がロケ地。「夕張に帰ることを尻込みする高倉健に発破をかけるのが桃井かおりなんです。見方によっては、女性によって支えられてきた栗山町を象徴するシーンといえるかもしれません」と斎藤さん。果たしてこの名シーンも再現されるのでしょうか。
エンターテインメントで魅せる新たな栗山町物語。それは、地元の人も気づいていない、“演劇”が見つけた新しい栗山町の魅力なのかもしれません。ぜひ、参加して体感してみてください。