ジャズ・シティ札幌の底力Ⅲ「南と北」レポート③

from 講座受講生

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 「ジャズ・シティ札幌の底力Ⅲ『北と南』」」の魅力を紹介するレポート第3弾は、前回に続き北海道シアターカウンシルプロジェクトのプログラム「地域と舞台をつなぐクリエイティブ講座」の受講生のレポートです。阿部藍子さん、佐久間泉真さん、三瓶竜大さんがそれぞれの視点で本公演の魅力をまとめてくれました。

「波紋に目を向けて」

「地域と舞台をつなぐクリエイティブ講座」受講生/阿部藍子

 どこに住んでいても繋がるものはつながる。
 そして、つながった先で何が起きるかを楽しむ。
 ソレがジャズであり、その「つながり」を起こした「きっかけ」に目を向けることがその地域特有のジャズを感じる上で一つの羅針盤になるのかもしれない。

 本企画で三度目となる『ジャズ・シティ札幌の底力』。「南と北」とサブタイトルが入り、北海道と九州のジャズミュージシャンを招く企画となっている。今回は北海道チームのリーダーである山下ヤスシさん(Pf.)、九州チームの丹羽壁さん(Ba)に加え、企画制作を担当された高堂理さん、構成演出をされる福居康子さんに見どころを伺った。

 興味深いお話がたくさん繰り広げられるなか、zoomの中で穏やかに微笑んでいる方がいる。それが福居康子さんの最初の印象である。終始やわらかな雰囲気の康子さんはご自身の演出構成の役割の面白さを「一ジャズファンであり最初の観客として『良さ』を伝えられること」であるとお話された。
 実際にスローボートでの演奏経験のある山下さんは「康子さんの一言から化学反応が産まれることがよくある。」と語り制作企画者である高堂さんも「長年ジャズを聴いてきた康子さんはアーティストの背中を押し続ける役割をしている。」と語った。
 康子さんこと福居康子さんは世界的ジャズピアニストでありスローボート前店主でもある福居良さんの奥さまであり、福居良さんが亡くなった後も、スローボートを引継ぎ札幌のジャズシーンを支えてきた。公私ともに長年JAZZに浸ってきた康子さんの蓄積からこぼれる一言はそのアーティストの本質を捉え、本人も気づいていない「良さ」を拾いあげ、縁をつなげる。もしかするとソコに札幌のジャズを知る『きっかけ』が隠れているのかもしれない。
 是非、本企画では札幌ジャズの『きっかけ』に思いを馳せながらライブを味わい尽くしてほしい。

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「南と北の化学反応」

「地域と舞台をつなぐクリエイティブ講座」受講生/佐久間泉真

 2020年から行われている人気企画「ジャズ・シティ札幌の底力」。第3回目となる今回は「南と北」というサブタイトルが掲げられ、九州と北海道、それぞれの地域のミュージシャンによるコラボレーションステージを楽しむことができます。

 ジャズ音楽の魅力はたくさんありますが、学校で聞く機会もあまりなく、ライブを見たことがない方も少なくはないかもしれません。九州で活動するベーシストで、今回出演される丹羽さんは、ジャズの特徴を「究極の個人主義。『スタンダード』と呼ばれる曲を知ってさえいれば、言葉は要らずにその場でコラボできる」と語ります。
 ある一定の決まりに則ってさえいれば、初めて会った人とでも即興で合わせることができる。この交流の生まれやすさは、私が馴染み深い舞台演劇にはなかなかない特徴です。
 コラボレーションの面白さ、そこから生まれる化学反応がジャズの最大の魅力の一つと言えます。

 今回出演されるミュージシャンの皆さんが、文化の中心である東京ではなく、地域に根ざした活動を続ける理由も前述のジャズの特徴にあります。
 丹羽さんによると、「現在は昔と比べて航空運賃も安くなっており、九州にいても東京のハイレベルなミュージシャンとセッションする機会がたくさんある」とのこと。ジャズはすぐに合わせることができるため、どこで活動していても全国のミュージシャンと交流しやすいのです。
 さらに札幌のピアニスト・山下さんには、「移動費に加えて、現在はSNSで情報を得たり発信したりと、地域で活動していても色々なことにチャレンジできる機会がたくさんある。どこに住んでいても、つながるときはつながる」とお話しいただきました。

 当日は果たしてどのようなコラボレーションが生まれるのでしょうか。南と北のジャズミュージシャンが一堂に会する一夜限りのスペシャルステージ。どうぞお見逃しなく。

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「言葉を超えて、地域を超えて」

「地域と舞台をつなぐクリエイティブ講座」受講生/三瓶竜大

 2007年から開催されている『SAPPORO SITY JAZZ』。国内のみならず海外からもアーティストが集まり、街の至る所で演奏が行われ、国内最大規模のジャズフェスと称される札幌の音楽イベントです。1ヶ月間の開催期間で多様な演奏と出会うことができるSAPPORO SITY JAZZですが、札幌市民として気になるのが地元アーティストの存在。
 札幌には素晴らしいジャズミュージシャンがたくさんいて、その方々の活躍の場として始まったのが今回紹介する『ジャズ・シティ札幌の底力』です。イベント名の通り、札幌で活躍するジャズプレイヤーの底力を観客の皆様へお届けすることを目的に2020年から開催されています。
 3年目の今回は、“ジャズ・シティ札幌の底力Ⅲ「南と北」”と題して、初対面でも興味深いやりとりが生まれる“ジャズ”という音楽ジャンルの強みを活かし、札幌と九州のミュージシャンが共演。南と北、風土の違いによって音色に変化があるのか、そういったことに注目して演奏をご覧いただけます。

  なぜ南と北なのか。ジャズだけではなく他ジャンルのアーティストでも多くの才能を輩出している北海道と九州ですが、その背景には、若手アーティストが都心でも活動することのできる劇場の存在がありました。活躍の場がないと、自分の才能に気づかず活動をやめていってしまうアーティストが多い中、“南と北“にはお客さんに見てもらえる環境があります。加えて、創作には終わりがなく、その時々で評価される環境がなければ、アーティストにとっては苦しいものです。東京や大阪にはない、脈々と受け継がれる魅力が南と北には存在しています。
  今回は、そんな九州と北海道に強いこだわりを持って活動を続けるミュージシャンがコラボレーションし、熱い演奏をお届けします。言葉ではなく、楽器で語り合う一期一会の演奏をぜひお楽しみください。

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※写真はすべて2021年に行われたJAPAN LIVE YELL project in HOKKAIDO「ジャズ・シティ札幌の底力Ⅱ」より