ジャズ・シティ札幌の底力Ⅲ「南と北」レポート②

from 講座受講生

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 「ジャズ・シティ札幌の底力Ⅲ『北と南』」」の魅力を紹介するレポート第2弾は、北海道シアターカウンシルプロジェクトのプログラム「地域と舞台をつなぐクリエイティブ講座」の受講生・泉陽二さんと谷口美和子さん。
 オンラインで取材した内容をまとめてくれました。泉さん、谷口さん、レポートは以下のとおり。

「中心から離れるほど、観客もミュージシャンも熱い!?」

「地域と舞台をつなぐクリエイティブ講座」受講生/泉陽二

 ピアニストの山下ヤスシさんは言います「初めて会うミュージシャンとの1回限りのセッション、何が生まれるかわかりません、どうぞお楽しみに」と。にこやかに。その日が待ち遠しくて仕方ないといった感じ。何が生まれるかわからない?
 丹羽肇さんは「言葉はいらない」ときっぱり。この福岡の丹羽さんと言う人、かつてはバロック音楽、16~17世紀の教会音楽が専門でトロンボーンを吹いてたんですって。そこで当時の優れた演奏家というのは、即興で音楽を橋渡しができる人だったと知ります。そしてバッハとチャーリーパーカーには通じるものがあると発見するんです。すっかり即興に魅せられ、楽器をベースに持ち替えて(低音であることには変わりなく)ジャズマンになったのでした。
 お二人にお話を伺いながら、音楽への愛情や、先人たちへの敬意やあこがれがひしひしと伝わってきました。丹羽さんは「どんなにいい演奏ができたとしても、それはその日のことで、もう次に向かっている。なんちゅうか、みんな理想が高いんです、裏を返せば自信がない」と。
 そんなミュージシャンに寄り添い続け、彼らの魅力を引き出す人がいます。今回で3回目となるこの企画の仕掛人、高堂理さん。そして札幌はもとより、全国のミュージシャンから慕われている福居康子さん。「これまで康子さんから頂いた言葉にどれほど救われ、励まされたか」と丹羽さん。「わたしは音楽ファンのひとり、その人に演奏してもらいたい音楽をリクエストするの」と康子さん。高堂さんは、北海道で活躍する魅力的なミュージシャンをもっともっとステージに上げたくて奔走したり、ミュージシャン同士を引き合わせて、どんな化学反応が起きるのかと期待しながら見守っています。
 丹羽さんが、持論ですがと前置きしつつ「中心から離れれば離れるほど、観客もミュージシャンも熱い」と。九州では時に厳しい声をお客さんからいただくこともあるとか。ミュージシャンと観客の間にいい緊張感があるにちがいない。半端なことはできない、ゆるさない。お客さんがアーティストを育て、アーティストもまた観客を育てる。

康子さんが「地方に拠点を置くことで良いことは、じっくりと自分の音楽に向き合えること」と言うと、丹羽さんが「ゆっくりと醸成されていくんです」と応える。また山下さんからは「どこに住んでいても、繋がるものは繋がる」とも。まさに今回の企画がそうだ。音楽は軽やかに越境していく。
 ところで、凄い演奏を間近で聴くと、笑っちゃってることってありませんか?我を忘れ、異次元の世界にどっぷり浸かっていることって?この感覚、こればっかりは言葉では説明できません。ライブじゃないと!一夜限りのセッションへ行ってみよう!旅立とう!

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写真は2021年に行われたJAPAN LIVE YELL project in HOKKAIDO「ジャズ・シティ札幌の底力Ⅱ」より

「本番で初めてわかる、出演者にとっても未知のLIVE」

「地域と舞台をつなぐクリエイティブ講座」受講生/谷口美和子

 九州からミュージシャン5人を迎えて北海道のメンバーと繰り広げる「ジャズ・シティ札幌の底力Ⅲ」ジャズライブが札幌のルーテルホールで行われます。北海道と九州を拠点に、全国で活躍するミュージシャンが集結。まず目に止まるのは、なぜ北と南なのか?
 ジャズという音楽は一定の決まりがあればいろいろな人がコラボレーションできる交流しやすい音楽。九州にいる素晴らしいミュージシャンと北海道のミュージシャン。日本の中心地から遠く離れた北海道と九州が音楽で会話をするとどんな音楽が生まれるのか。そんな好奇心からこの企画は生まれました。
そして、この公演は、世界的にも高く評価されている北海道の名ピアニスト福居良さんの奥様の康子さんも、プロデューサーとして出演者のコーディネートに携わられています。福居良さんとともに沢山の素晴らしいミュージシャンや音楽と出会い、その中で培われてきた耳と感性で選ばれた北海道と九州のミュージシャンがどんな化学反応を起こすのか。それは、本番の演奏で初めてわかる、出演者にとっても未知であり、楽しみなことの一つだそうです。
ジャズの大きな特徴といえば、即興演奏が中心ということがあげられるかと思いますが、その時の観客、会場の空気、気候であったり、その時に奏でた音、その音に対して返した音、その立体的な要素が化学反応し、その時その場にしかない音楽が生まれる。ミュージシャン、観客1人1人も音楽の一部になる。そう考えると、ジャズ鑑賞は、ジャズを聴く、というよりジャズを体感する、という言葉の方がぴったりなのかもしれません。その化学反応を大切にした「ジャズ・シティ札幌の底力Ⅲ」。会場がどのようなジャズ音楽で、どのような音楽の色彩に包まれるのか、とても楽しみな公演です。

写真 写真は2021年に行われたJAPAN LIVE YELL project in HOKKAIDO「ジャズ・シティ札幌の底力Ⅱ」より