(以下、田島ハルさんの感想)
「史上最高最大の新作」と大仰な煽り文句のついた、きっとろんどん公演「STAGE」が幕を開けた。
役者の一挙一動も見逃せない、一言一句も聞き逃したくない。五感を研ぎ澄まして沸き上がる高揚と緊張。あまたのミュージカルが行われてきた旧四季劇場は異様な空気に包まれていた。
「廃墟・肝試し・オカルト」はきっとろんどんの十八番のモチーフなのだが、それを大劇場に移し、新たな実験を試みているのが伝わった。
シュール・ナンセンスな笑いも健在だ。しかし、ゲラゲラ笑っていると、あっという間にマウントをとられて首筋に刃物を突きつけられているような、作品に仕掛けられた数々の罠に観客はまんまと引っかけられる。この罠が巧妙に陰湿に張り巡らされており、その謎解きは劇中で、または劇場を出た後の時間差で「ああ、そうだったのか!」と合点がゆく。うまい、と膝を打った。複雑に編まれた縄を少しずつ解いてゆく緩やかな解放。観劇後の余韻もまた味わい深く、反芻しては快感の喜びに浸る。
「史上最高最大の新作」は、その名に偽りの無い大傑作だった!
因みに、脚本と演出の井上悠介氏も役者としてこの舞台に立っている。過去の作品「発光体」でもそうだったが、チョイ役にも関わらず一番オイシイ役を演じていたような…。これもまた、きっとろんどんの味わいなのである。
田島ハル
札幌生まれ札幌在住。漫画家、イラストレーター、俳人、文筆家、小樽ふれあい観光大使。
2007年に集英社で漫画家デビュー。
著書に「モロッコ100丁目」(集英社)、「旦那様はオヤジ様」(日本文芸社)他。
朝日新聞道内版のイラストとコラム「田島ハルのくいしん簿」、北海道新聞の4コマ漫画「道北レジェンド!」、角川「俳句」の俳画とエッセイ「田島ハルの妄想俳画」など連載中。
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