インタビュー

INTERVIEW

「このイベントで、チカホの日常が少しでも戻ってきてくれたらうれしいですね」

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札幌駅前通まちづくり株式会社
西尾美紀さん

 「JAPAN LIVE YELL project」の北海道会場「SAPPORO Borderless Live Arts CARAVAN」。そのキックオフイベントとなる「まちなかシアターinチカホ」が10月15日(木)~19日(月)、札幌駅前通地下歩行空間で開催されています。
 1日約8万人の人たちが行き交い、毎日のように物販やステージイベントが行われていた札幌駅前通地下歩行空間。チ・カ・ホの愛称で親しまれているこの場所も、新型コロナウイルスの影響で一時は人の往来が激減し、イベントも軒並み中止となりました。いまは人の出も戻りつつあり、イベントも少しずつ再開されていますが、緊急事態宣言後の本格的なステージイベントは「まちなかシアターinチ・カ・ホ」が初めてとなるそう。
 今回のインタビューは、イベント再開に向けたチ・カ・ホの取り組みなどをチ・カ・ホを運営管理する札幌駅前通まちづくり株式会社の西尾美紀さんに聞きました。

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ーコロナ前は1日8万人ほどの往来があったそうですが、コロナの影響で人通りが激減した時のチ・カ・ホはどのような様子でしたか。

西尾 北海道独自の緊急事態宣言が出たあたりから人出は減り、一番落ち込んだ時で1日あたりの通行者数は前年比半分くらいになりました。その時期は、いつも人でにぎわっているチ・カ・ホが、ずうっと端まで見通せるくらい人が少なくなっていて・・・。もちろんイベントもなくなり、お店のシャッターも全部閉まって、電気もついていない様子を見ると、ゴーストタウンのようで衝撃的でした。

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ーどれくらいの期間、イベントを中止していたんですか。

西尾 全国で緊急事態宣言が出た4月17日から5月末までの1か月半は札幌市からの要請を受けて、広場のイベントは全て中止になりましたが、その前の2月頃からコロナの感染拡大を受けて主催者側の判断でキャンセルされるイベントもありました。

ー現在はどのくらい人の流れが戻ってきているのですか。

西尾 現在は前年比1割減ほどになり、お店もこれまでと同じように開いているので通常に近くなっています。イベントが行われるチ・カ・ホの広場の利用も、ほとんど戻ってきていますが、ステージイベントや企業PRのイベントなどは、例年に比べキャンセルや規模縮小などが多くなっていますね。

ーイベントを再開したのはいつごろからでしょうか。

西尾 6月初旬から会場の利用が再開されましたが、直後はまだ皆さん様子を見ている感じで、自主的にキャンセルされる方もいましたが、8月くらいからは利用も戻ってきている感じです。

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すでに再開されている北海道・札幌の魅力あるライフスタイルや暮らしのシーンを提案する「kuraché(クラシェ)」。

ーイベントを再開するにあたって、どのようなことを話し合われましたか。

西尾 今までと同じように再開はできないので、貸し出す側として利用者さんにどのような対策をお願いすればいいのか、スタッフ全員で考えました。チ・カ・ホのいいところは、不特定多数の人が通る場所ということだと思うのですが、それゆえにイベントを行うときは人数制限がしにくく、どんな人が来るのかわからないという面もあります。また、チ・カ・ホで行われるイベントは種類も多岐に渡るので、さまざまな業界のガイドラインを参考にしたり、実際に百貨店に足を運ぶなど、まちの中に出かけて行って、お店や施設の対策を見て社内で情報の共有を図りました。

ーチ・カ・ホといえば、音楽や大道芸などを路上ライブ的に行っていた「チカチカ☆パフォーマンススポット」を思いだすのですが、いまはどうなっているのですか。

西尾 以前よりも広い場所に会場を移し、人が密にならないようにして、まずは週末だけ実験的に再開していています。最初の頃は演者がお客さんに向かってしゃべることは禁止していたのですが、実はしゃべってもらった方が密になっているお客さんに注意をしてもらうこともできるんです。何でも禁止、禁止ではなく、どうすれば演者さんとお客さんがともに安心して楽しめる場をつくることができるのか、今も試行錯誤をしながら続けています。

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全国からも多くのパフォーマーが集まっていたチ・カ・ホの人気企画「チカチカ☆パフォーマンススポット」は現在週末限定で開催中。(写真はコロナ前のもの)。

ーこのコロナ禍の中で西尾さんが感じたことや思ったことなどがあれば教えてください。

西尾 コロナ禍で、テレワークになり家からほとんど出ない生活になったときに、この先どうなるのか、本当に不安な時がありました。先が見えない時って本当に心がつらいなと感じました。ただその時に家で音楽のLIVE配信を見たり、インターネット上にあがっていたアート作品にふれたりすることで、前向きな気持ちになれたし、折れそうになっていた心が支えられたような気がします。コロナでアートやLIVEをリアルに楽しむ場がなくなってしまいましたが、その反面、オンラインで楽しめる場ができたという点では、悪いことばかりではなかったのかもしれませんね。

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ー今回の「まちなかシアターINチ・カ・ホ」が緊急事態宣言後初の長期間のLIVEイベントとなるそうですが、それに対する期待はありますか。

西尾 チ・カ・ホはいつもイベントや催しをやっていて、特に目的がなく来ても通りがかりで楽しいことを見つけられる場所で、そこがいいところだと思っています。でも、今はそうした機会が少なくなっているので、このイベントでまたチ・カ・ホにはパフォーマンスやアートやLIVEを楽しめる場所がある、ということを思い出してくれるといいな、と思います。芸術や文化活動をリアルに楽しめるチ・カ・ホの日常が、これを機会に少しでも戻ってきてくれたらうれしいですね。

ー最後に。西尾さんはイベントとコロナ対策を両立していくために、最も必要なことはどんなことだと思いますか。

西尾 イベントを主催する側の人たちは、来場者の方に安心して楽しんでもらおうとさまざまな対策を行っています。でも、対策を徹底していくためには来場する方々の協力も欠かせません。見に来る人たちも一個人として十分な対策をして、イベントを主催する側と来場者がお互い協力して、一緒にイベントをつくっていく、という気持ちが大切なのではないでしょうか。

profile にしお・みき
1992年北海道生まれ。大学卒業後、インターネット広告会社勤務を経て、2017年より札幌駅前通まちづくり株式会社へ入社。おもにチ・カ・ホやアカプラの貸出・管理業務のほか、毎年6月に開催している「サッポロフラワーカーペット」の企画運営を担当。