この作品って、どんな作品?

札幌ハムプロジェクト「カラクリヌード」

とにかく、てんこ盛り。なもんで紹介文も、ついつい特盛りで

小耳に挟んだんですが。
今シーズンのラインナップ的には一二を争う「分かりにくい」作品だそうで。コレ。
他作品が時系列的にも内容的にもとっても分かりやすい展開なのに比べ、
『カラクリヌード』はいわゆる「順送り」には展開しない。
映像で場面転換の注釈を入れることもない。たぶん。
シーズンに向けてある程度の改訂はあるとしても。
軸となるストーリーに色んな経緯・事情・思惑を挿入させる。
漫画や映画なら当たり前の行ったり来たりを、説明をとことん省いた舞台上で展開する。
観客の想像力を信頼してるように。


今作『カラクリヌード』や『幕末サムライヌード』のように『〜ヌード』と題された系統の
すがの公作品は、基本的にシンプルな素舞台。セットなし。
衣装や小道具の使用は極力抑えて役者の表現力と観客の想像力で物語を形作るというもの。
『カラクリヌード』に関しては小道具は小さな発光体のみ。
効果音はすべて役者の口から。
しかも総登場人物は50人を超える。それを10人で演じる。
ハイスピードで時間も空間も飛び越える構成。
回想シーンもバンバン入ってくる。
その脳内整理たるや。大忙しです。

だからけっこう集中力とか時空間掌握力を要求される。
たった一言ですべてを分からせる、みたいなことがいっぱいある。
そこがすがの作品の魅力でもあり。

 ph
『カラクリヌード』。
2014年5月と12月の公演にに客演しちゃった御縁で、このたび紹介文の寄稿を、との重責を
拝命つかまつりました。
どーも。
誰だお前?って感じでしょうけども。
えーと、ワタクシ「おしょー」とか呼ばれております。近頃ホンモノになっちゃいました。
版画とかNPOとか2足どころかやたらとワラジを中途ハンパに履き散らかしております。
ちょっとの間、お付きあいのほど。

はてどのように紹介をと悩んだんですけども。 だってね。そもそもね。
何度も何度も再演されて関わった役者は全国各地に100人以上いるんじゃね?
なんでオレ?っていう。
したっけ。ワタシらしい観点で、つーと。  やっぱコレかなと。
お節介をね。
すがのの嫌がるヤツを。他のヒトがやったらすがのにぶん殴られそうなのをね。
そう、すこーしだけ、思い出話のフリして、
ガイド。
 ph
客演は、ハムプロ直営居酒屋「すわ」に通い出したのがきっかけ、かな。
新代表ジロなんてオレが芝居してるとこなんて見てもいないのに。
あとになって演出すがのが昔むかーしワタシがやってた即興芝居のこと思い出して。
それより何より、ワタシはこの作品が好きで。

2009年、札幌で初めて公演したときのを観たのは衝撃でした。
マリアテアトロ時代からめっちゃ笑わせ泣かせて満席売り止め1000人動員のSKグループ→ハムプロジェクトのすがの公が、劇団と併行して札幌や東京の演劇人とおもしろいことをするっていう企画の1発目。
清水企画のナカツカ嬢にyhsの美乃ちゃんやANDの岡村さんなど当時の「ザ・旬!」ともいうべきイキのいい役者さんや
赤沼・ヨシヒロ・タニケン・充子・重堂など注目株の若手たちが集められ。すがの自身も出演。
SKGの本公演はなかなかチケットが取れず数本しか観てなかったワタシ、
赤沼の(たしか)初客演だってんで観に行ったのがこの『カラクリヌード』。
劇場は真ん中にステージのみ。
袖幕はなく照明の外れたステージ両脇には出番に備えた役者が瞬時に上がるべく待機。
待機役者がギラギラとステージを見つめるサマは格闘技のリングサイドのごとく。
(タニケンだけなぜか客席ばっか見てた)
役者さん達が自身のカンパニーの時とは違う疾走感や猥雑さや切なさを目まぐるしく見せてて。
すがのとの化学反応にもの凄く興味を持った瞬間でした。

そんな印象深い作品のリメイク。超魅力的なお誘いでした。
5月はロボット工学の博士。12月は博士の旧友的存在の採掘工場長。違う役でした。
一度参加してるからといっても自分の役のみならず座組が変わって演じ方や役の捉え方、バランスが変わると
全体の彩りも大きく変わる。
5月の咲坂博士はダブルキャストの東京支部・竹屋の佇まいは真逆だったし、
12月の工場長も、5月に長流3平ちゃんや彦素が演ったことは参考にならない。
年齢的な座りどころだけでは済まされない役の描き方。
しかも。
本作に限らずすがの戯曲は複数の役を掛け持ちする。主役だろうと関係なく。
全国をワゴン1台でセットや衣装を積んで回っちゃうハムプロは、時にたった4人で何役も演ったりする。
演じながら音響照明の操作までやっちゃうこともある奴ら。すんごい。

『カラクリヌード』では「名もなき大勢」として自分の役以外にこんな役回りを担います。
(以下、だいたい出番の順に)←はいココから、お節介
地下採掘用ロボット群(通称モグラ)、出来そこないのクローン妹群、上層階級のお偉方、結婚式の参列者たち、テレビの報道陣、国会議員たち、政治家・役人・研究者・技術者など重役たち、戦場の兵士群、近衛兵、などなど。
しまいにゃ自分自身をクローンパーツで改造して生き長らえるクローン研究の博士の「パーツ」(舞台中、腐り落ちたり取り替えたりする腕など)なんかも演ったりします。

あと冒頭とクライマックスに出てくる主人公のロボットゼロスケがロボットの残骸を改造移植するシーンでは、全員がゼロスケと合体してどんどん大きくなってく。
破壊され再び残骸と化しても一旦ゼロスケの一部となった部品達には彼の残留思念がそれぞれをシンクロさせてく。
バラバラになりながらも、もがき、叫ぶ。

その思いが地下6000メートルの採掘場からヒロインが囚われている地上6000メートルまで1万2000メートルの彼方へのメッセージとして、肉体と台詞と小さな発光体の放つ光でもって、伝わってくれれば。

 ph
あとこれ、相関図みたいなのがあればなぁって思ってたんで、(ひょっとしたら作ってくれるかもしれませんが)これまたお節介に物語世界のアウトラインというか、一部の相関関係にすこーしだけ触れますと、

主人公のロボットが恋い焦がれる女性、リコ。
彼女の母(アサコ・故人)の面影を投影したカタチでロボット工学権威の父・咲坂はフルメタルのダッチワイフを作ります。
彼女の祖父・柏木もまた最愛の娘(つまりアサコ)の喪失感を投影し、彼の得意とする遺伝子工学の粋を結集してクローンを作ります。
これに彼女の夫・権藤が関わることにより、ふたつの愛情から発展した技術が結合して物語の軸は展開します。
人間同士の、あるいは人間と非人間との愛情の交錯。

こんなのをちょっとアタマの片隅に入れといてもらうと、分かりやすいかも。
ホント、お節介。 すがのの検閲を通るかしら。 マズいべか。



そして最後に流れるSE-NOのオリジナルテーマ『僕にはこれしかできないけれど』。
歌声の静かな熱量がゼロスケの、いや彼に限らず工場長の、権藤の、夢見の、咲坂の、柏木の想いとしてあふれる。
(ここ、ついオトコ目線で男性キャストにリンクしちゃってますが、きっとリコ・テンコ・タネ・アサコら女性キャストにもリンクしてる)

「想い」が愛情だけでなく欲やら希望やら絶望やら自己探求やら重荷やら成長しないと気づかない親心やら、
てんこ盛りかつ超高速で飛び交う舞台『カラクリヌード』。

ぜひいろんな役にシンクロしながら観てください。

 ph
あぁぁ、正直、今回も出たかった。
仕事変えたばっかだし、1〜2月はウラ繁忙期なもんで断念しましたが。
今回も魅力的なキャスト陣。サッポロ本部とトーキョー支部の役者陣による総力戦。拮抗する客演陣。
久々にすがのと組んで『サムライ』『カラクリ』連投するSKグループOB飯野さんなんて、阿吽の吸引力。

もうひとつの「分かりにくい」要因となってるガチャガチャ感、狭い空間にテンションMAXで叫びまくる群読は
時にうるさいと思えなくもないけど、たぶんここはロングランでもあるし、すっきりかつ丁寧に仕上げてくれると思いますんで。
ぜひぜひ。
 ph

石川 亨信(いしかわ としのぶ)

道教育大在学中に「劇團あぽん」結成。井神拓也らと岩見沢・江別にて活動。
併行して2000年まで岡本美穂・児玉恭明らと即興的演劇ユニット「imprism」で活動。
’97年石狩市民野外劇グループ「Team0133」結成(演出)。
客演は棄犬ワルツ、3ペェ団札幌、WATER33-39など。
千年王國では稽古場提供のほか小道具や題字などいろいろ手伝う。
別名、差し入れテロリスト。introや怪獣無法地帯、トランク機械シアターなどにいきなり甘いものを持って行く。
また銅版画家としても活動。北海道美術協会(道展)、北海道版画協会会員。
近年では舞踏家とのコラボ「ライブプリンティング」やお寺deコンサートの企画、
石狩市花畔の多目的レンガ倉庫NPO法人「ArtWarm」の運営も(副理事長)。
2015年10月より浄土宗法性寺住職。独身。募集中。←何を。

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