この作品って、どんな作品?

札幌座「亀、もしくは…。」

恥ずかしい亀

 ずっと出演者4人だった芝居が5人になるという。しかも、チラシを見るとシスター役だ。そんな役が出る余地があったっけ、この芝居。5人目のシスターは、やっぱり入院患者なのだろうか、それとも本当にシスターなのだろうか。
 ph  そう思って新しい脚本を読んでみると、確かに余地はあった。というか、まるで5人目の伏線かのような部分が昔の脚本にもあったのだ。かつてはわずかに台詞で触れるだけだった部分を膨らまし、実在の人物として登場させている。
 ph  しかも、かなりエキセントリックな膨らまし方だ。過剰に演技しすぎると、そこだけコントのようになりかねない。だが、抑えて演技すると面白くない、というか思いっきりやらないと演じていて恥ずかしそうだ。
 ph  その5人目は、劇団千年王國の演出家、橋口幸絵が演じるという。ほかの4人も演出家だ。いつから演出家専用の芝居になったんだっけ。演出家って舞台に出る時、どこか恥ずかしそうだ。恥ずかしさを隠そうと堂々と演じている風情に、かえって恥ずかしさを感じてしまう。
 ph  橋口はこの恥ずかしい役を、演出家としての恥ずかしさを残しながら演じるのか、演出家としての恥ずかしさを抑えながら堂々と恥ずかしく演じるのか。私も、どこか恥ずかしさを内に抱えながら客席から見守りたい。

松本悌一

北海道新聞文化部記者

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