この作品って、どんな作品?

吟ムツの会’16 舛井さんお盆ですよ! 公演「八百屋のお告げ」

『おばちゃんだって、かわいい』

この「八百屋のお告げ」前回の上演が2008年。そんなに経ちますか。
ものすごくざっくり言ってしまいますと、
「おばちゃんが、八百屋のおじちゃんにあんた今晩死ぬよって言われてしまって、さあどうする?」ってお話なんです。

どうする?となりまして、
多佳子さん(死ぬよって言われちゃったおばちゃん)は、まず、
とにかく炒める。野菜を炒める。妙なことを言った八百屋への報復かってなくらい野菜を炒める。
今晩死ぬよ、って言われて自分なら何をするかってどんなに考えてみても「野菜を炒める」これは選択肢には上がらないです私は。
食べる。そして作る。ひたすら作る。変です。変なんですけど、そして随所でこの「なんか変」が出てくるんです、この多佳子って人は。うじうじしたり、でも妙なところで思い切りが良かったり。なんだこのひと、なんか変なの、と笑っているうち…「変なの、でもなんか可愛い」になってくるんです。妙に可愛く見えてくるんです。「あれ、かわいいぞ、このおばちゃんなんだこれ」って。特に最後の方は、うっかり恋でもしかけそうになるくらいにかわいい。
 ph その「あれ、なんだこれ」現象は真知子さん(多佳子さんの学生時代からの友達)にも起こります。多佳子さんの家にいきなりやって来た真知子さん、自由すぎます。勝手知ったる他人の家って言葉は確かにあるけれど、どんなに勝手を知っていたって長年の友達だって他人の家でしょう。なのにいきなり探し物を始め出す。どんどん探します。「物持ちのいいあんただったら持っていると思って」とかって(何を探しているのかは観てのお楽しみで)。
自由で、好き勝手言って、どんどこ突き進んじゃう真知子さんのパワフルさに置いてきぼりを食らって、ぽかーんとなります。どどーんと舞台に仁王立ちしている真知子さんにぽかーんとしていると、どんどこどどーんと突き進む真知子さんは、多佳子さんや他の人たちの迷いやためらいも実はどどーんと受け止めていて、あれ、なんだこれ真知子さん、好き勝手かと思いきや、懐深いじゃないか「あれ、なんだこれ、かっこいいおばちゃんじゃないか」って。
 ph そして邦江さん。多佳子さんと真知子さんの友達、第3の女!
これはねえ。もう、現れるなり悪い女(笑)です。悪女です。そしてなにやら怪しい薫りがします。おばちゃんだけど、おばちゃんだからこその酸いも甘いも嚙み分けた、どきどきさせる台詞をもう現れるや否や、吐きまくります。私もねえ、もういい年した大人(ってかおばちゃん)なんですけどね。どきどきです。でも訳有り。訳有りで悪女。鬼に金棒。
邦江さんが実は一番、屈折したおばちゃんかも知れません。その分、邦江さんの「あれ、なんだこれ、このおばちゃん、ほんとは」がわかったとき。ほろっ、と来ました。この芝居、ほろっとポイント(萌ポイントともいいます)が多数ありますが、初演時、私が一番ほろっときたのが邦江さんの本音が漏れた瞬間でした。
「悪女」になるためには色々、苦労があるものです。
 ph ああ、愛すべき可愛らしいおばちゃんの話で終わってしまいました。
男性陣も勿論魅力的なキャラクター達です。心配なのは還暦を迎えるうち(劇団怪獣無法地帯)の代表が28才の若者役をやるってことくらいでしょうか(笑)

でもこの芝居を観たならきっと
「年をとるのって悪くないな」
って思える。そんな芝居です。

舛井演出のバトンを受け取った亀ちゃんの演出。楽しくない訳がない。
ぜひとも!観るべし!

伊藤しょうこ

芝居のべんと箱→現在、劇団怪獣無法地帯所属。
一応、副代表(ということについ最近なりました)作・演出の際には伊藤樹(たつる、と読みます)の名前で。
酒が好きだがすぐ酒に飲まれる。駄目じゃん。落ち着きのない大人です。
平成ライダーでは仮面ライダーナイトが一番好きです。昭和ライダーなら仮面ライダーV3。

→演出家のコメントはコチラ   →作品のあらすじはコチラ
もどる
pagetop