演劇の魅力は、"ひと"そのものだと思います。登場人物たちの複雑な心の動き、役者の声、言葉、仕草、表情は、もちろんですが、観ているとその人の呼吸までもが作品の一部のように思えてきます。だから、観始めたら最後まで一瞬も気を抜く隙がありません。この独特の緊張感に、私は何度も心を掴まれました。また、私が何より心惹かれるのは、劇場という場所です。開演前の冷たい空気が、徐々に作品の世界に染まっていき、私たち観客も含めた"ひと"の温もりに満ちていく様子を、肌で感じられるからだと思います。それも含めて演劇のおもしろさなのではないでしょうか。
1980年代〜90年代にかけて札幌にも演劇ブームがあり、人気の劇団は数千人を超える来場がありました。その頃も私は演劇をつくる側にいたのですが、あのとき演劇ブームを一緒につくったお客さんたちに、ぜひまた劇場に足を運んでもらえたらと思っています。あのときの感性といまの感性はどのくらい違っているのか、若いころ感じられたものが今でも感じられるのか、あるいは今だから感じられるものがあるのか。あの頃札幌で小劇場の芝居を観ていた方たちにとって札幌演劇シーズンは、20年後の自分を発見するおもしろさがあると思います。
演劇には独特の世界観や雰囲気があって、その雰囲気を好きな一部の人が熱心に劇場へ通っている、みたいな偏見がありました。「自分には共感しづらい世界なのかな…」と。でも前回の演劇シーズンで初めて演劇を観て、イメージが180度変わりました。「自分みたいな素人でも楽しめるんだ!」という感じで。
観客を物語の中に引き込んでいく“生”の迫力ってやっぱりスゴイ!一緒に見に行った同僚と男二人で号泣してしまいましたからね(笑)。あまりに感動して、帰宅後奥さんに「なんとしても観に行って来い!」と強要したくらい(笑)。
ぜひこの体験をもっともっと多くの人にも味わってほしいです。
デザイナー/斉藤 剛さん
いろんなところでお芝居を観てきました。芝居小屋や大学の講堂、時には豪華な大劇場、そして舞台の後ろに森や海や、闇が広がる野外の劇場で。いろんなシーンで泣いて笑って、打ちのめされました。家族の愛や主人公の孤独、衣装や美術の美しさ、切れ味の良いギャグ、役者の身体能力の高さや、かすかに読み取れる目線の動きや小さな仕草が表現する何か。そして、その一期一会の瞬間が、私の中で芽を出して葉を広げ、今、花をいっぱい咲かせているような気がしています。お芝居は決して答えをくれたわけじゃない。でも私はお芝居から自分で感じて、自分をみつめて強くなる力をもらったように思っています。
フローリスト/持田優子さん
いろいろなアートがある中で、心の底から泣いたり笑ったりできるのは演劇だけだと思うんです。これほどまでに心が揺さぶられる世界って、演劇だけ。そこが演劇の一番のおもしろさではないでしょうか。いま、私たちは他者に触れることを避けて生活している気がします。最新のツールを使って多彩なコミュニケーションを行っている反面、対面での人間関係は面倒くさく、とても古いもののように捉えられています。そうした中にあって、「自分」が経験できない「他者の人生」を追体験し、「他者の人生」に共感することができる演劇は、今後ますます私たちに意味あるものになっていくと思います。
高校教諭・演劇部顧問/中島 憲さん
「他人の不幸。」
斎藤歩(札幌座チーフディレクター)
「劇場は世界につながるドアだと思っています。『なにこれ初めて!』に出会い、脳みそフルシャッフルされちゃうのが、私の劇場通いの醍醐味です。」
橋口幸絵(劇団千年王國 主宰)
「砂の中から金を拾うようなとこ。ほとんどの劇は面白くないけれど、奇跡のように出会えた面白い劇は、人生に衝撃的な変化をもたらす。」
納谷真大(イレブン☆ナイン 主宰)
「少し不思議で、どこか生々しいところ。」
廣瀬詩映莉 (イレブン☆ナイン役者)
「息づかい、体温、一瞬の表情。舞台の上にはいつも、見た事の無い熱量があります。その近くにいたくて、裏方になりました。」
徳村あらき(劇団千年王國 衣裳スタッフ)
「街角で偶然に初恋の人に会った時のように、人知れず心揺さぶる何かがそこにあるような気がする。芝居って多分そんなものだと思います。」
イナダ(劇団イナダ組 主宰)
「公演後、笑顔だったり、少しだけうつむいてたり…感想を伝えてくださる方がいたり。 劇場に来られた時とは違う表情をしたお客様の背中をお見送りすること。」
笠島麻衣 (シアターZOO 支配人)