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札幌演劇シーズンとは?

ゲキカン!
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ライター  岩﨑 真紀さん

 子どもの頃(30年前…)、日曜の朝のテレビからなんとなく流れていた、アメリカのシチュエーションコメディ。『アーノルド坊やは人気もの』とか。
そこに、これまた子どもの頃に観た、ドリフターズのコント(土曜8時から放送されていたアレ)を、ごく少量のサスペンスとともに織り交ぜる。
ただし、笑いをもたらすリズムは現代のもので、熱量・加速感は圧倒的。とにかく笑える。

『あっちこっち佐藤さん』は、そんな芝居だった。
一人の男が几帳面な二重生活でやりくりしている、二人の妻との暮らし。そこに生じた綻びを繕おうとして右往左往、嘘に嘘を重ねて周囲を巻き込み、誤解から混乱が深まって収拾がつかなくなる。「あわや露見!」というハラハラ感が観客をぐいぐいと引っ張る中で、ドタバタがどんどん加速していく。

実に馬鹿馬鹿しい。混乱の全ては、「二人の女のどちらにもいい顔をしたい」という、男のしょうもない願望のせいなのだ。その馬鹿馬鹿しいことに、「ジタバタして泣きわめいて必死になっている」というのが、傍目からはものすごく笑える。気が付けば笑わされている。

コメディを謳う演劇作品では、奇天烈な仕掛けや荒唐無稽の展開が付き物だ。けれども笑いのポイントは、それらの登場そのものではない。それらを「舞台上の役者が、役柄の必然として呼び寄せてしまった」ように見えるときに、思わず笑いが込み上げるのだ。
『あっちこっち佐藤さん』でいえば、仕事熱心かつ純朴なクリスチャンを演じた小島達子の「巡査長」。そして、甲斐性も知恵もないが人はいい「売れない作家」を演じた、江田由紀浩の「タロウ」。他の役者陣も熱演だったが設定の都合もあり、「必然」に対する貢献度でいえばこの二名がダントツだった。彼らの醸した「必然」が、原作が持つ「筋としてのおもしろさ」をがっしりと支え、演出家が施した「場面のおもしろさ」を機能させていたように思う。

…と、ここまで書いて思うのだが、人それぞれにツボの違う「笑い」について分析的に書くのは、どうにもナンセンスなような気がする。

ところで、ストーリーについて言うと、
この芝居はかなり早い段階にオチへの伏線が張られている。
それでも、私はなんとなく「展開がこう来たらそうはいかないのでは、ドリフのコントのような形で終わるのでは」と予想していた。
が、急転直下、物語は用意されていた「あっけなくも意外な結末」へと至る。

う〜ん、今の私は、この結末は気に入らないのだ。「であればあの部分はそうじゃないでしょ!」「というか、大前提としてのその部分はどうなのよ?」という気持ちが、フツフツと湧き上がるのだ。

けれどもそのような状態に至ったのは、舞台の熱が冷めて、改めて思い返してから。観終えた直後は「ああ、笑ったなぁ!」という感覚だったのだ。
ううむ、なんだか悔しい。笑いに騙されてしまった。

悔しまぎれで、これだけは書いてしまおう。
マイヨ・ア・ポア(ツール・ド・フランスの山岳賞ジャージ)を持っている人が、それを着込んでヘルメットをかぶるなら、乗るのはママチャリではなくロードバイクに決まっている。それが必然だ。いや、その服装でママチャリに乗るという設定がビジュアル的におもしろい、ということはわかるのだけど。

うん、必然に対する感覚も、かなり個人的なようだ。

PROFILE
岩﨑 真紀
フリーランスのライター・編集者。札幌の広告代理店・雑誌出版社での勤務を経て、2005年に独立。各種雑誌・広報誌等の制作に携わる。季刊誌「ホッカイドウマガジン KAI」で演劇情報の紹介を担当(不定期)。

在札幌米国総領事館職員  寺下ヤス子さん

イレブン・ナイン 「あっちこっち佐藤さん」
2014年8月3日 18:00

日本人が金髪のカツラをつけて、シャロンとかトニーとか呼び合って海外作品を演じているのは苦手だ。「あっちこっち佐藤さん」は、原作はイギリス発だが、
タイトル通り日本人用脚本となっており、しかも見事に「札幌仕様化」されているのでそんな心配はまったくない。登場人物はみんなよくある名字、佐藤さん。
二人の妻をもつ主人公、佐藤ひろしは、オリジナル英文では、予想通りジョン・スミスだった。大ヒットした笑劇だけあって、実にしっかりした構成だ。
ドタバタになっても筋が通っている。終盤にはホロリとさせるところもあり、洒落た笑いに落ち着くところはさすが。これなら、男からも女からも不平はでない。

さて、私の幼少期は、テレビで吉本新喜劇を観て育っているだけに、笑いは「ま(間)」が大事だからねえ、とやや上から目線でコンカリーニョへ来た。
いきなり、納谷氏の芸人風の関西弁でのマエ説があり、関西弁=お笑いはバッチリという思い込みだけが根拠だが、これは大丈夫と期待十分。それにしても暑い!
琴似の温度計は午後5時半を過ぎても34度と表示されていたが、配られたうちわを仰ぎながらの観劇となった。しかしそんな暑さも気にならないほど、
俳優さんたちが汗だくで織りなす笑いに集中できた。

今回、心に響いたセリフは、「正しければいいってもんじゃないんだ!」という佐藤たろう役の言葉。人の幸せ、世の平和、正しくても得られないことはいろいろ。
正しさより優しさ、にストンと納得した瞬間だった。でも最後の正直な感想は、オンナ万歳!

PROFILE
寺下ヤス子
在札幌米国総領事館で広報企画を担当。イギリス遊学時代にシェークスピアを中心に演劇を学んだ経験あり。神戸出身。

特定非営利活動法人S-AIR代表  柴田尚さん

夫:52歳。美術系プロジェクトの企画者。現在、ほとんど芝居は観ないが、実は高校時代は演劇部。職業柄かストーリーには入り込まず、製作サイド的クールな視点でものを言う。

妻:46歳。一般企業事務員。芝居は夫に比べればよく観る方で、好きな作品は何度でもリピートできる。「二時間ドラマのラスト10分だけしか観てなくても泣ける」というくらい感情移入しやすいタイプ。

夫「あっー、髪洗うの忘れた!」

妻「シャワー浴びに行ったのに、なんで?」

夫「君が悪いんだよ、だってさ、俺はいつも髪 → 顔 → 身体を洗うという順番が決まってるの。それを今日は急に君が・・・・」

妻「新発売の洗顔パウダーを使えと声をかけた(笑)」

夫「だから、顔 → 身体の順番に洗ってしまって、肝心の髪を洗うの忘れた!」

妻「いつ気がついたの?」

夫「鏡を見ながらドライヤーで髪を乾かそうとしたとき」

妻「遅すぎる(笑)・・・考え事してるからでしょ。早く感想書いてしまいなさい」

夫「決まってることが、ひとつずれるといろんなアクシデントが起こるってことあるね」

妻「主人公のタクシードライバーの佐藤さんも、きっちり一日のスケジュール決まってる人なのよね」

夫「一見、超がつくほどまじめなに見えるのだけど、実は重婚してて家庭がふたつある」

妻「その矛盾を緻密な計画でなんとか保っているのだけど、一度くずれると」

夫「雪だるま式に矛盾がふくらんでドタバタになる」

妻「原作がレイ・クーニーってイギリスの劇作家の作品を、納谷真大さんが脚色演出したのよね」

夫「日本でもっとも上演されている翻訳コメディーのひとつなんだね。有名な作品みたいだ」

妻「原作タイトルは『ラン・フォー・ユアワイフ』(君の妻のために走れ!)。 イレブン☆印ナイン版は『あっちこっち佐藤さん』。みんな佐藤さんだからよけいに話がややこしいのよね」

夫「俺、アートの仕事で100人の鈴木さんと会ったことがある」

妻「あなたの話はどうでもいいの」

夫「役者さん、キャラ立っててなかなかよかったね。」

妻「私、中でも太郎さん気になっちゃった。最初はうざかったんだけど、最後はとにかく頑張れっ!て応援したくなったわ。セットはどう?」

夫「パラレル感がポップに表現されていてよかったと思うよ。役者の動線もきれいで動きやすい感じだった」

妻「私、この作品はもう一回観てみたいわ。今回、Wキャストだと書いてあったし、別のパターンも楽しみ」

夫「演劇シーズンはロングラン方式だから、その変化も楽しめるってことか」

PROFILE
柴田尚
特定非営利活動法人S-AIR代表
北海道教育大学特任教授

平成11年、札幌アーティスト・イン・レジデンスを立ち上げ、平成17年7月、特定非営利活動法人S-AIRとして法人化。初代代表となる。現在までに33カ国84名以上の滞在製作に関わる。同団体は平成20年度の国際交流基金地球市民賞を受賞。その他、「SNOWSCAPE MOERE」(札幌市)などの様々なアートプロジェクトやアートスペースの立ち上げに関わる他、平成21年度より「廃校・旧校舎の芸術文化活用調査」などの調査事業も始める。平成26年度より、北海道教育大学教授(NPOマネジメント研究室)となる。NPO法人アートNPOリンク理事、Res Artis総会2012実行委員会委員、OYOYOまち×アートセンター、OYOYOゼミ部長、共著に「指定管理者制度で何が変わるのか」(水曜社)がある。

映画監督・CMディレクター  早川 渉さん

「どの佐藤さんを追いかけよう?」



 初日の前日、7月31日に行われたプレビュー公演で観劇。
7年前にサンピアザ劇場で初演され大好評を博した爆笑コメディで、原作はイギリスの笑劇作家レイ・クーニーの「ラン・フォー・ユア・ワイフ」、韓国で映画化もされているらしいが日本未公開かな?

 芝居のコメディって、かなり難易度が高い気がする。実際に凄く面白いコメディの芝居に出会った記憶は少ない。
コメディは、間の取り方やテンポ感、スピード感が重要だと思うが、映画やテレビだと細かいカット割りやカメラワークでテンポ感やスピード感を出すことは容易だし、音楽や効果音も割と違和感なく使えるので役者の力量が多少落ちても何とかなるケースが多い。しかし、芝居の場合これらをうまく表現するためにはまず役者の力量がものを言う。今回の作品は、劇中に音楽や効果音をほとんど使わない作りで、とにかく役者陣の奮闘が目を引く作品だ。
「あっちこっち佐藤さん」というタイトルの通り、主人公のタクシー運転手佐藤ヒロシをはじめ、二人の妻はもちろん隣人の佐藤さん兄妹に北署の佐藤巡査長に南署の佐藤巡査、新聞記者も佐藤さんというように、もうとにかくみんな佐藤さん!徹底している。観る前はあらすじを軽く読んでいたこともあり、主人公の佐藤ヒロシがあっちこっちに右往左往しながら動き回るスクリューボールコメディなのかなと思っていた。しかし、ふたを開けてみたら主人公が右往左往するだけでなくいろんな佐藤さんがとにかくあっちこっちに動き回りどんどん混乱してグチャグチャな群像劇になっていく。
 この芝居の楽しみ方、オススメは何人も登場する佐藤さんの中からお気に入りの佐藤さんをまず見つけること。とてもよく練られた原作・脚本なのでストーリーや役者全体を追いかけなくても、お気に入りの佐藤さんを中心にその役者の細かい芝居や表情、リアクションなどを観ているだけで楽しいし、とにかく役者が動き回る芝居なので、まるでマラソン中継を観ているように思わず
「頑張れ!あと少しでゴールだぞ!」と応援したくなる(笑)。
今回の自分は、江田由紀浩演じる隣人の佐藤タロウがお気に入り。
主人公以上に出ずっぱりで奮闘し、汗まみれになりながら演じるタロウがとても可愛く、可笑しく、魅力的だった。
今回はプレビュー公演での観劇だったが、芝居は本来、ぎっしり詰まった劇場で観客席と舞台が一体化したライブ空間で楽しむのが正道。本公演ももちろん見に行くつもりだ。
キュートで可愛い佐藤さん?
パワフルでお茶目な佐藤さん?
普段はぶっきらぼうだけど実は寂しがり屋の佐藤さん?
野心家のくせに人情味あふれる素朴な佐藤さん?
かっこいいけどインキン持ちの佐藤さん?
いろんな佐藤さんが劇場であなたを待っていますよ〜

PROFILE
早川渉/映画監督・CMディレクター 札幌在住
現在開催中の札幌国際芸術祭の連携事業で、アイヌ神謡集の一遍にインスパイアされたショートムービー「この砂赤い赤い」を制作中。9月半ばの完成を目指している。かなりシュールで血なまぐさい映画です(笑)ただいま、サポーター募集中です!
https://theaterkino.net/wp/wp-content/uploads/PDF.pdf
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